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研究ピックアップ 
伊藤 康貴
地域創造学部 公共政策学科 講師 伊藤 康貴
「ひきこもり」等の問題を通じて今後の社会のあり方について研究をおこなっています。

地域創造学部 公共政策学科 講師
伊藤 康貴 (イトウ コウキ)

#社会学(地域社会論、社会調査論、社会問題論、当事者論) #ひきこもり
Q.01
研究テーマとその内容、具体的な取り組みについて教えてください。

A.
専門は社会学で、研究テーマは「ひきこもり」や不登校などに関する「現代的な生きづらさ」、およびそれらに関する種々の社会的活動(当事者活動や社会運動など)を通じて、後期近代社会における排除と包摂の力学を考察することです。おもに関西や長崎にある当事者団体?支援団体とかかわりながら、参与観察やインタビュー調査を進めてきました。不登校に関する社会運動はここ30年ほど、「ひきこもり」に関する社会運動はここ10年ほどで活発化してきた比較的新しい現象です。これらの現象を微視的に調査すると同時に、その現象が歴史的?社会的にどのように位置づけられうるのかという巨視的な視点を踏まえて研究を進めています。
Q.02
この研究をはじめようと思ったきっかけについて教えてください。

A.
私自身、もともと10代から20代にかけて不登校やひきこもった経験があり、その後の大学在学中もしんどさがあったことから、そのしんどさを何とかしたいという思いがありました。ちょうど私が学部生だった2000年代後半は、「当事者研究」というものが注目され始め、社会学でも「当事者の視点」に立脚した研究の必要性が指摘されていました。そのような風潮の中で、私は卒業論文として、自分のひきこもった経験を含めた自分史を記述しました(https://note.com/khk_110)。大学院に入った後は、「ひきこもり」という問題をより深く研究するために自助グループなどをフィールドワークし、私以外の当事者?経験者や関係者の多様な語り?活動に触れ、ひとくちに「ひきこもり」といっても多様な経験?姿があるということを知り、また社会的に流通している「ひきこもり」のイメージも極めて一面的であることを知りました。私と他者とのギャップ、フィールドと社会一般のイメージとのギャップなど、様々なギャップに惹きつけられたことが研究のきっかけになると思います。
Q.03
研究内容が身近な社会とどのように関わり、影響を及ぼすのか教えてください。

A.
「ひきこもり」という問題はこれまで若者問題とみなされてきましたが、最近では、80代の親と50代の未婚の子が同居する生活困窮者世帯を意味する「8050問題」という言葉も出てきたように、いったん就職した人にとっても他人事ではありません。また、単なる個人的な問題として焦点が当てられがちですが、この問題の背景には、後期近代社会における構造変動(グローバル化や雇用の流動化、個人化など)が関わっており、地域社会の諸問題(貧困や差別、ジェンダーなど)との関連も指摘されています。したがって、「ひきこもり」などの問題を考えるにあたっては、単にどのような支援が望ましいかを考えるだけでなく、どのような社会が望ましいかを考えていく必要があります。
Q.04
今後、研究をどのように進めていこうと考えていますか。

A.
C.W.ミルズという社会学者が今から60年も前に述べたことですが、社会学は、個人的な問題を社会的な問題と関連させ、自らの生活史を社会構造や歴史と交錯させて思考するものです。単なる他人事として問題を考えるのではなく、自分も一人の当事者であるという地点から今後の社会のあり方を考えていきたいと思います。また社会学という学問分野においては、おそらく他分野と比べても単著の出版が重要な仕事となっていますので、目下のところ、これまで執筆した自分史や博士論文、その後の研究論文をベースにして単著の出版準備を進めているところです。
Q.05
ゼミや講義で学生を指導をする上で、いつも心がけていることや大切にしていることはありますか。

A.
常勤の専任教員としては2020年度で3年目、その前のポスドクでの非常勤講師の時代を含めても教員経験は5年足らずですので、まだまだ学ぶことは多いです。その上で意識していることは、大学の外部の地域の人々との関わりを多く持つということと、できるだけ多様な社会問題に触れてもらうということです。これまでも、公務員やNPOで活動する人を中心に、様々な人との協働でゼミや講義をおこなってきました。今はほんの数年先の状況も見通すことが難しい時代です。そのような時代において自らの人生を選択するにあたっては、単に情報を得るだけでなく、様々な視点や問題意識をふまえて的確に判断し実践する力が必要だと考えます。そしてその力は、大学内外の人やモノと積極的かつ主体的に関わっていくことで身についていくものだと考えます。
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